『いましかない』




いつも越えられない場所があった
その先に君がいるというのに


「日直はノート集めて持って来てくれ」
そう言い残し出ていく先生

チャンスだ!
心の中で叫んだ

男子の方は休みのため
今日の日直は彼女一人
みんなが彼女の元にノートを持っていく中
わざとノートの中身を確認して時間を稼ぐ


「もうみんな出した?」
と教室を見渡す彼女
慌てた素振りで彼女の元に行く

既に積まれたノートの上に乗せると
「確に受けとりました」
とおどけて言った
その笑顔にクラッとくる

「よっと…」
ノートを持ち上げ行こうとする彼女

今だ!
「あっ…待って!」

振り返った彼女
「何?」
「あっ…いやその…」
目で訴えても仕方がない
声を出さないと!

「名前書き忘れたとか?」
「いや…違うんだ…」
早くしろ!


「半分持つよ!」


「ありがとう!」
彼女がお礼を言ったのは…
仲の良い女友達
友達に負けた

「ええと…ごめん
なんでもない」
そう言ってその場を離れる


格好悪い…



最近
日課になっていることがある
いやむしろ儀式とでもいようか

ギンギンの外へ出る前に
キンキンに冷えた炭酸飲料を一気に飲み干す
そして雫が滴るグラスを残して一気に外に出るのだ


でもその勢いはあっという間に衰えてしまう


君を前にすると





モドル