『いましかない』




きっかけは単純なもので
委員会の集まりで
作業をしているときだった

「痛っ!」

紙で指を切ってしまい
みるみる内に出てくる血をどうしようかと考えていたら

「私もよく切るんだよね」
と照れ笑いしながら
絆創膏をくれたのが彼女だった


ただそれだけ…
ただそれだけの事で
意識しだす自分
今まで幾度となく経験してきたことだ

同じクラスなのにその距離は縮むことはなく
気付けばもうすぐ夏休み
しばらく会えなくなることに少し焦りを感じていた


この想いを伝えるべきか…



あんなに晴れていた空が
だんだん暗くなり
とうとう雨が降ってきた

なかなか止む気配はない
しかたなく明日のテスト勉強のため図書室に

明日の教科は得意分野だ
開始早々
今日の彼女の会話を思い出す
彼女にとっては苦手分野らしい

もし偶然にもここで出会ったら教えられるのに…

そんなことを考えてみるも
現実はドラマや漫画のようにはいかず…
気付いたら雨が止んでいた


校舎の外はムッとした暑さ
歩いていると前方の集団に目が止まった

他のクラスの男子と仲良くしゃべっている彼女
いつもの女友達もいるのにその二人だけが目につく


知らず知らずの内に歩くペースが速くなり
集団を抜かした


まともに話しも出来ないくせに
一瞬
嫉妬してしまった自分に
腹を立てながら





モドル